精神科医の詩集『深海魚のように心気症を病みたい』兼本浩祐


精神科医の詩集『深海魚のように心気症を病みたい』兼本浩祐 深海魚のように心気症を病みたい
兼本浩祐

 『深海魚のように心気症を病みたい』。タイトルが素晴らしい。
 知ったキッカケは、目次の章題に「ポワン・ド・キャピトン」というラカン用語があったこと。著者の兼本浩祐さんは精神科医。
 これだけで「ジャケ買い」に十分ですが、更にグッと来たのが著者近影です。
 よく知らない著者の本を買う時、わたしは大抵イメージ検索で著者の写真を探します。見た目の悪い人間は必ず中身も悪いです(断言)1。別段ハンサムでも美女でなくても構わないのですが、パッと見た時の直観を圧倒的に信じているので、まず顔を見ます。
 そして見つかった画像がコレ。

兼本浩祐   兼本浩祐

 即ショッピングカート行きです。
 この画像のあったコンテクストがまた素晴らしい。

兼本浩祐

 兼本先生・・キュートすぎます・・。

 この本が詩集だと知ったのは、支払いが完了してからでした。

 韻文というのは、出会いのタイミングが非常に重要です。
 散文でも、読む時期・年齢・状況によって価値が変わってくるものですが、詩や短歌などの場合、このタイミングが本当にピンポイントで、ある詩がある人にとって本当に値打ちがあるのは、とても短い人生の一季節、場合によっては数日だけだったりします。
 だからこそ詩は面白いのであって、詩集を買ってページをめくり、「なんじゃこりゃ」と思っても全然気にせずどんどん読み飛ばします。一冊の詩集に一篇ヒットがあれば、それは買って正解だったということです。
 結論から言って、兼本さんの作品のほとんどはねっとりしすぎてわたしの性に合わなかったのですが、一篇だけとてもグッとくる詩がありました。
 このサイトのコンセプトにもシンクロしているので、ここに転載させて頂きます。

愛する羊へ

眠れない妻に
羊の数を数えたり
例えば私は死のことを
眠れない夜には思ってみる

神への祈りに代えて
結び目をほどかずに
眠ることはあっても

三日月のように痩せた
数えられた羊は
ひょっとすると
昼過ぎまで
眠り続けることができたのだろうか

 素晴らしい。
 この一篇だけで、もう二度とこのお医者様と人生で擦違うことがなかったとしても、出会って正解でした。
 もう出会った人と、また会う時があるかは、いつだってわからないのですから、やって来てサヨウナラ、そこまでが出会いのすべてです。
 そして、もう出会ってしまった出会いは、十分に失敗したという限りにおいて、すべて致命的に成功しているのです。

  1. わたしは他人のココロというものにほとんど興味がありませんし、少なくとも興味を持たないように日々努力しています。「内面」に目を奪われたら、後は坂道を転がり落ちるようにまっさかさまです。見えないものにつかまる前に、見えるミットにパンチを叩き込む。考えるのはそれからで十分です。個人的に他人に求めるものは、容姿の美しさ、そしてわたしの美しさを褒め称えること、以上の二つだけです(笑)。 []

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