『ムハンマド―イスラームの源流をたずねて』小杉泰


4634490102 ムハンマド―イスラームの源流をたずねて (historia)
小杉 泰
山川出版社 2002-05

 小杉泰先生によるムハンマド伝。読み物としてはムハンマド伝としては、以前にご紹介した鈴木紘司さんの『預言者ムハンマド』の方が面白かったですが、『預言者ムハンマド』がムスリムによる預言者伝なのに対し、『ムハンマド―イスラームの源流をたずねて』は非常に「日本人的」な視点によるもの。イスラームについての予備知識がなく、距離をおいて眺めたい時には、こちらの方が入りやすいのかもしれません。

実際にイスラーム世界のどこかに滞在してみるとわかることであるが、「ムスリムはアッラーを信じている」という表現は適切ではない。彼らはアッラーが実在することを前提に暮らしているのである。それは、私たちが空気が存在するのを自明視している程度に、自明なこととみなされている。(・・・)
しかし、日本人の目から見れば、そうではない。唯一神の実在は、理念であると思える。私は言う――だから、理念は人間にとって現実なのである、という観点からそれを見るべきだ、と。友情が現実だと思うのであれば、同じように、唯一神や預言者が現実でありうると考える必要がある。

 それゆえにこそ、神様を信じることは、始まりであって終わりではないし、問いであっても答えではないのです。
 少なくとも、わたしにとって、神様は「発見したもの」「出会ってしまったもの」です。出会いは解決ではありません。それどころか、大いなる問いの始まりにすぎません。
 「一体これは何だ、この身体に張り付き、一瞬も離れることのない、世界そのものとは!」。