『生物と無生物のあいだ』福岡伸一

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『生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)』 福岡伸一 『生物と無生物のあいだ』福岡伸一
 しあわせのかたちのsho_taさんに薦められて読みました。
 これは売れるでしょう。評判の本ですし、あちこちで色々な人が色々なことを書いているので、書評っぽいことは書きたくありません。とりあえず娯楽として一級ですから、ハズレはないです。 『もう牛を食べても安心か』を拝読した時、「この人は個別問題じゃなくて、科学論・科学史的視点で一般書を書かせたら凄いんじゃないか」と思ったのですが、そのものズバリの作品にできあがっています。
 「文章がうまい」ということも多くの人が取り上げていて、実際上手だと思うのですが、敢えて混ぜっ返せば、ちょっと自分の文体に酔いすぎですね(笑)。いかにも理系男子くさい。その辺の「酔いっぷり」をちょっとだけ抑えめにしたら、もっと締まった魅力的文章になることでしょう。
 動的平衡やら「内部の内部は外部」といったポイントについても、ラカニアンが色々言いそうなので、敢えて言いません。
 一つだけ、素朴に「カッコイイなぁ」と思ったところを取り上げると、キャリー・B・マリスという科学者。

彼へのインタビューの中で、「あなたを形容する言葉として、エキセントリック、奇行、不遜などのいろいろなものがあるのはよくご存知だと思いますが、自身を形容するのに最もぴったりした言葉あるとすればなんでしょう?」と問うた私に対し、マリスは即座にこう語った。
「それはオネストだね。私はオネスト・サイエンティストだよ」
(・・・)
 マリスはサーファーである。マリスはLSDをやっている。マリスはあらゆる職場で女性問題を起こし辞めている。マリスは講演会で好き勝手な話をして降壇させられた。マリスはPCR利権からはずされたのでいまだにシータス社を恨んでいる。マリスは結婚と離婚を繰り返している。マリスはエイズの原因がエイズウィルスでないと主張している・・・。
 これらの噂は彼の口から発せられたことを源とし、それらはおおむねそのとおりだった。

 オトコマエです。
 こういう真にhonestな人というのは、アメリカ社会でも大変なことが多いでしょうが、日本では絶対に生き残れないでしょうね。そしてそういう日本が「正直」を美徳としている空々しさには、笑うしかありません。
 それはともかく、ほんとにエイズウィルスが原因じゃないんですか? これは何か、生物学的な深い洞察を示しているものなのでしょうか? それとも、ここで突然「神の意志」とかが入ってきちゃうのでしょうか?
 後者なら後者で、それもhonestに主張して頂きたい。個人的には、むしろそういう展開の方がオイシイと思います(非理系)。
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