送り火と年賀状

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 京都にいた頃、入り浸っていたカフェのマスターがこんなことを言っていました。
「お盆過ぎたら年末や」。
 さすがに、お盆過ぎから年賀状の準備を始めたら気が早すぎるでしょうが、いかにも京都人らしいです。
 実際、お盆が終わると、年末まではあっという間です。
 南中高度からすれば「一年の真ん中」は夏至ですが、気温や四月で年度を切る日本の風習のお陰で、八月くらいにピークがあるような気がしています。「まだ折り返し」な気分でいると、実は三分の一しか残っていません。気を引き締めていかないと、それこそ年賀状シーズンまで一瞬です。
 京都のお盆と言えば、五山の送り火。
 長いこと京都に住んでいながら、京都の文化も祭も大嫌いだったワタクシですが、五山の送り火だけは良いイベントだと思っています。
 祇園祭なんて、人を見に行くようなものです。オマケに、祭りで集まると言えばヤンキーです。文化だの伝統だの言っていますが、要するに祇園祭の実態はヤンキー見学です。
 その点、送り火は京都全体が「イベントスペース」。ヤンキーのいない場所からでも楽しめます。
 もちろん、出町柳の鴨川デルタをはじめ、定番の「送り火スポット」というのはあるのですが、見晴らしさえよければ市内の大抵の場所から見られます(行政上の「京都市」じゃないですよ)。


 個人的に、最も心に残っている送り火は、大学時計台の頂上から見たものです。
 最上階という意味ではなく、時計台のそのまた「屋上」です。
 もちろん、普通なら登れるわけがないのですが、その年は夏休み期間に改修工事が行われていて、時計台周囲に足場が組まれていたのです。要するに、勝手に登って送り火見物したわけです。
 送り火の日は、この「秘密ルート」に気づいた人が大勢登ってくるか、わたし一人か、どちらかだと思っていたのですが、点火時間間近に絶景の屋上でぼんやりしていると、一人だけ学生が登ってきました。
 一人でも大勢でもなく二人。当然、初対面です。
 微妙に気まずいですけれど、結構面白かったです。
 ビールをもらって、送り火の後は彼の「隠れ家」らしいバーに案内してもらいました。ちなみに、そこで飲んだウィスキーが異様に不味かったです。
 密かに年賀状シーズンまであと一歩の送り火。
 送るもよし、送られるもよし、です。
 今年はそろそろ、送られてみますかね・・・。

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