失読症、英語圏と漢字圏で原因部位に差−「表意文字」という幻想

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 英語圏と漢字圏で失読症原因部位に差があるという報道が、讀賣新聞にありました。
 失読症は左脳の「頭頂葉」や「側頭葉」などでの神経活動の低さが原因と考えられてきましたが、香港大のリ・ハイ・タン助教授らが先天的に失読症である中国人の子ども8人の脳を磁気共鳴画像装置を使って調べたところ、左脳の「中前頭回」という西洋人とは別の部位の活動性が低いことがわかったそうです。
 非常に面白いですが、これを「表音/表意」という伝統的な偽の問題に摺り替えてしまうと実にもったいないです。
 第一に、中国語における漢字の位置は日本語における「表意」と呼ばれがちな使用法とは異なります。第二に、これは重要すぎるのでとてもブログでは詳述できませんが、文字の要諦は「意味の伝わらなさ」です。日本語ではこれが「かな/漢字」という二重性によってわかりやすく担われていますが、漢字に特異性があるとしたら、それは「意味を表す」のではなく「かつて意味であったものを思い出させようとする」という点です。もちろん、この意味は思い出せません。
 確かに漢字の中には象形文字的な説明によって語れるように見えるものがありますが、これらの「説明」が逸話的なものに過ぎないのを見落としてはいけません。逸話が排除している「思い出せなさ」こそ見るべきで、しかも思い出せないのはそこには何もないからです。つまり「表意文字」という幻想が覆い隠しているのは、意味ではなく無意味そのものです。
 前にあった何かではなく、「前」という形でしか指示できない内部にある裂け目。発音できてしまった途端にわからなくなる意味。
 この辺りについて、現代思想系に回収してうっかりわかってしまう人は、不健康なので以下の本などでちゃんとわからなくなりましょう。かなり乱暴な毒ですが、毒をもって毒を制し、きちんと中毒に。元からわからない人は、とりあえず健康を害するところから始めて下さい。
 ワイルドでお勧めです。
『二重言語国家・日本』石川九楊 NHKブックス ¥1019

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