墜落した鳩に当たった男


 クルアーンの「食べてはいけないもの」を列挙している下りに、「墜落した獣」というような表現があります。
 崖から落ちて死んだヤギとかは、食べてはいけないのです。
 なぜ墜落した生き物を食べてはいけないのかについては、イスラーム内的にも外的にも色々な理屈付けがあるのですが、そんなことより、「墜落死したどうぶつ」というフレーズがツボにはまってずっと気になっていました(スイマセン)。
 ヤギだってそんなにしょっちゅう足を滑らしたりしないでしょうに、わざわざ一項を設けて注意することですか。
 というような話を、先日友人にしたところ、衝撃のエピソードを聞かせてくれました。
「いや、そんなことないですよ。僕、墜落してくる鳩に当たったことがありますよ」。
 ええー!?

 その日、いつものようにバイト先に向かって自転車をこいでいた彼は、視界の隅に何かが落ちてくるのが見えたそうです(ちなみに彼とわたしはこのバイト先が一緒だったことが縁)。初めは飛んでいるのかな、と思ったのですが、どんどんスピードを増して墜落してきます。その軌跡が見事に自転車の走路とシンクロしてしまい、落ちてきたものがジャストで彼の肩に当たってしまったそうです。
 落ちてみると、やはりそれは鳥で、鳩だったそうです。
「で、どうしたの!? 死んでたの!?」
「死んでたと思いますよ。うわっ気持ち悪っと思ってそのまま行きました。遅刻しそう、というかもう遅刻していましたから」
 ええー!?
 そんな一生に一度あるかないかのオモシロ事件を前にして、バイトの遅刻なんか気にしないでよ!
 めっちゃ気になるわ!

 とにかく、鳩すら墜落して死ぬ(というか死んで墜落してくる)ことがあるらしいですから、墜落死した生き物を前に「食べてよいやらいけないやら」と悩む風景もあながちレアケースではなかったのかもしれません。

4569685358 ハトの大研究―古代から人とともに生きてきた鳥 (PHPノンフィクション)
国松 俊英
PHP研究所 2005-03

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする