マトリョミンと電気の温もり


 今月の全日オフがほぼゼロに決定し、かつ体調悪くグッタリしているところに、突然マトリョミンが届きました。
マトリョミン


 マトリョミンとは、マトリョーシカ+テルミンで、マトリョーシカの中にテルミンを内臓したもの。義姉妹からの誕生日プレゼントでした。泣けます。泣けすぎます。
 激しく個人情報なので詳述しませんが、彼女はマトリョミンと縁のある方で、少し前にわたしが「テルミン欲しいなぁ~」と呟いていたのを覚えていてくれたようです。
 で、手書きで付けてくれた説明書を参考に演奏しようとしてみたのですが、これが難しい!
 まず、チューニングがうまくできない。二つのダイヤルを調整してイイ感じの場所を探すらしいのですが、不器用なせいかちっともうまい具合になりません。
 とりあえずテキトーなところで手を打って音を出してみるのですが、わたしが使うとただのブザー状態で、全然楽器っぽくありません。
 考えてみれば、テルミンだって楽器なのですから、ただ手に入れただけで上手に演奏できるわけがありません。バイオリンを買ってバイオリニストになれるなら苦労ないです。
 今までテルミンの動画などを何気ない気持ちで眺めていたのですが、神だということがよくわかりました。

 こういう人がテルミンの神です。

 ちょっと前に話題になっていた動画ですが、これもかなり好きです。

 全部電子楽器なのに、一番「電気」っぽいテルミンが一番暖かい。何でしょうね、これ。
 音が一つしか出せない頃のシンセサイザーを神業技巧で弾きこなしていたプログレはめちゃくちゃカッコイイと思うのですが、あの時代の「電子楽器」な温もりがある気がします。
 LSTYさんが「初音ミク問題は実は初音ミク問題ではないと思う」で、

 僕は宅録が好きだけれどDTMが嫌いだ。「同じじゃねえか」と言えば同じなのです。しかしいかにもDTM的な音楽、GM音源的だったり、いかにも「一台のシンセサイザーで作りました」という感じの音楽が大嫌いだ。
 しかし「一台のサンプラーで作りました」とか「一台のカシオトーンで作りました」という音楽はわりと好き。

 と書かれていたのですが、この「理屈の通らない」ヘンな基準にとても共感します。

 また、Pure Pop For Now Peopleさんの技術論に、

弟「最近シロートの書いた映画のレヴューなどを読むことがあり、そういったものの中によく、これは現代の目からするとチープに見えるかもしれないが当時は衝撃的で、とか書いてあるがそれって音楽の場合、往々にして逆だよね」
兄「ああ、おもに特撮/CG/SFX系の場合、そう言われることが多い気がする。(・・・)しかしたとえばロックだったら、現代のロックのギターがいかにクリアに、いい感じの音圧で録られていたとしても、やっぱりジミヘンのほうがすげぇや、ってなる」

 という問題提起があったのですが、技術と「凄さ」という点で繋がるようにも思います。
 もちろん、昔のものが手放しに凄かったわけはなく、すぐに思いつく解釈として、

①ナショナリズムにおける「ルーツ」幻想と同様、失われたもの(最初から存在しないが「失われた」として語られる)こそ最も権威付けられる
②凄くない昔の音楽は、単に忘れられたので現代まで伝わっていない
③不便なところで工夫すると、時々ものすごい火事場のクソ力が発揮される

 といった要素が考えられるでしょう。
 映画と音楽という点では、映画が極めて現代的なテクノロジの上に成立しているのに対し、音楽はおそらく人類の歴史以来存在し、深く身体化している(というより、身体性から音楽が生じている)、という「比べようもなさ」があるので、単純比較は危険だと思いますが。

 ついでに、マトリョミンで探していたらこんなの見つけました。

 メカがメカを演奏。
 安倍公房に『R62号の発明』という、「機械化された人間が機械で機械的に人間に復讐する」小説があるのですが、ちょっとそれを思い出しました。いや、この映像はそんな殺伐としたものではないのですが。
 一回疎外されたものが、単純に「温もり」を回復するのではなく、疎外の極みをもって回復を試みる時、この疎外の手段(機械化)は、一転して極めて「人間的」なものになります。そして裸で「人間的」なものなどない以上、極限の疎外にこそ「一度も存在しなかった温もり」という幻想のすべてがあるのです。
 ちなみに『寄生獣』を初めとする岩明均作品の力強さは、この「疎外の極北をもって疎外を回復する」という復活のドラマ構造に拠るところが大でしょう。サイボーグ・ファシズムとも通じます。

 マトリョミン、販売もされているようです。

手を触れずに演奏できる歌うマトリョーシカ

 って、45,000円!? ご、ごめん・・・考えてみたらマトリョーシカだけでも相当するよね・・・うぅ・・・。
 庶民はminiテルミンですかね・・・。

『大人の科学マガジンVol.17 テルミン (Gakken Mook)』 大人の科学マガジン編集部 『大人の科学マガジンVol.17 テルミン』

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