ブートキャンプのフロントキック

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 ブートキャンプにはフロントキック(前蹴り)のエクササイズがありますが、このとき、バンドをクロスさせて蹴り脚と反対側の腕を背後に回し、負荷をかけます。
 クロスじゃないと蹴り難いから、というのもあるでしょうが、引き手を対角の腕にとっている、というのは何気に大切です。
 フィットネスとしてやるだけなら深く考える必要は全然ないのですが、武道ヲタ的には興味深いポイントが隠されています。


 武道未経験者に「蹴る」という動作をやらせると、大抵はサッカーボールを蹴るような動きになり、蹴り脚側の腕を背後に引く、つまり身体が捻れるような動作になります。
 しかし、武道的に考えると、むしろ蹴り脚と反対側の腕が引かれる、つまり右手と右足が一緒に出る「ナンバ」的動作が正しいはずです。
 サッカーの場合、蹴る対象は当然サッカーボールです。サッカーボールは質量が軽いですから、強く蹴ろうとしたら、インパクト・ポイントの最高速を稼ぐことが重要になるはずです。つまり回転系の動作で脚をブーン!と振り回すようにするのが、一番スピードが出せるはずです。もちろん、実際のサッカーはそんな単純なものではないでしょうし、はるかに精妙なコントロールをしているのだと思います(サッカーをやったことがないので、全然的外れだったらゴメンナサイ)。
 武道的な「蹴り」では、蹴る対象は人体です。人体でも、倒れた相手の頭を蹴る「サッカーボールキック」等の場合なら、サッカー同様「最高速」の蹴りが有効になるはずです。
 しかしボディを正面から蹴る、例えばムエタイのストッピングの前蹴りのようなフロントキックでは、速さよりも「重さ」、つまり力積が重要になります。スパン!とキレイにキマる蹴りでも、全体重が乗っていなかったら向かってくる相手を止めることはできません。
 力積の大きい突き蹴りを出そうとすると、自然とナンバ的な動作になります。最高速は出ませんが、重さのある打撃になります。
 ブートキャンプのビリーの動作を観察していても、ベースにあるのは武道系の動作であることがわかります。
 「ナンバ」というと「右手と右足を一緒」みたいなイメージがありますが、それだけではただの運動オンチのヒトです。身体が外側を回るようになり、トルクが出るどころか単にムダで遅い動きになるだけです。
 身体全体が同時に動くというのは、軸を中心に「回る」のではなく、それこそ井桁崩しのように中心に一回崩れるようになりながらスッと半身が前に出ることです(細い隙間を通るイメージ)。まぁ、そんなことが簡単にできるくらいなら苦労はないのですが、一応理想としてはそういう動きのはずです。
 中国武術では分脚という前蹴りっぽい蹴りがあり、金的を狙ったりボディを靴を履いたつま先で蹴る、等と言われますが、初級の練習では蹴り脚を軸足に一旦寄せて、それから外に弾くように出す、というやり方をします。この時、演武などでは蹴り脚と同じ側の手を甲をパンッと蹴り上げたりします(反対側の手は揚げ受けのようにする)。
 手をパンパン蹴るのは演武用の演出という要素も大きいでしょうが、元々はおそらく「ナンバ」的動作を染みこませる練習だったように思います。実際は「イチ・ニー」と寄せてから蹴っては遅すぎますから、一挙動で蹴るように心がけます。初級では分解することで基本動作を明快にしよう、という意図があるのではないかと思います。
 ブートキャンプの場合、良くも悪くも「フィットネス」なわけですから、練習的動作に集中しても悪くないはずです。フィットネスだからこそ、そんなヲタ的ポイントに気をつかいたくない、というのもありますが。
 まぁ、そんな能書きを垂れたところでウェイトのある人には勝てませんし、正にそのウェイトを減らすことが最大の目的であるブートキャンプで武道ヲタぶりを弾けさせても意味ないのですが・・・。
 この辺の武道ヲタ話や「速く鋭い」打撃と「重い」打撃、という視点については、ブルーバックスの『格闘技「奥義」の科学―わざの真髄』という本がとても面白いです。当然ながら本を読んでも強くはなりませんが、純粋に読み物として楽しいです。武道なんてやっていないヒトにもおススメです。
 数字が出てこない、もうちょっと「武道書」寄りのものとして、わたしが読んだ中で面白かったのは、『ナンバ走り』『スーパーボディを読む―ジョーダン、ウッズ、玉三郎の「胴体力」』あたり。
 ちなみにブートキャンプですが、わたしは王道ショップジャパンでビリーバンド付属の4枚組ブートキャンプを購入しましたが、字幕が要らないのであれば、先日話題にした「コンバットエクササイズロープ」アマゾンで売っている「基本」「応用」の2枚組を購入するのが一番割安です。ただし、字幕なしで最初からやる気になるのか、DVDがちゃんと再生できるのか、そして「コンバットエクササイズロープ」が使い物になるのかどうかはわかりません。個人的には、やっぱりショップジャパンが堅実だと思います。
 念のためですが、ビリーバンドなしのブートキャンプなど、運動のうちに入りません。最初はバンドなしで可にしても、一週間もすれば適応してしまいますから、何らかの形で負荷をかける努力は絶対必要です。
ブートキャンプ関連エントリ:
ブートキャンプやってます!
ブートキャンプ日記
ブートキャンプ まとめ&効果
ビリーズブートキャンプ 効果 続報
ブートキャンプのちょっと格闘技な使い方
ブートキャンプのサイドキック
にせビリーバンドは代用品になるのか

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コメント

  1. T34/68 より:

    本当にたびたび失礼します。9月の第1,第2土日にかけて開講される「言語聴覚士のための音声学」(総計18時間)が明日一杯まで募集を延長している知らせが、申しこんでいた私にありました。一般受講者でもOKとのことです。テキストはプリント配布のようです。ご多忙のところ恐縮ですが、土日ということもあり、念のためお知らせする次第です。
    http://www.tufs.ac.jp/common/open-academy/kouza.html
    他言語習得に於ける音声学の有効性については意見の分かれるところではありますが、人によっては一定の効果はあると思います。毎回毎回押しつけがましく、かつリスキーなコメントばかりですが、とり急ぎお知らせします。
    根本的に誤解しているのかもしれませんが、短期集中で音声学を学ぶというのはサイボーグには向いているように思えます。もしかしたら、アンドロイドとの混同が生じているのかもしれませんが。不用意なコメント、何卒ご海容ください。

  2. より:

    お返事遅くて申し訳ございません。
    ちょっとバタバタしていて、申し込みはできませんでした。語学は当面独学以外は厳しいですね。とにかくものすごい制約の多いヒトなので・・。
    最近は昼にドトールでアラビア文字の練習しています。まず、字が読めない(笑)。