チベット・中国・オリンピックは、胡散臭さの三題噺


 チベットと中国とオリンピックについて、何か書いても至極下世話で神様ウケ1しないなぁ、と思って傍観していたのですが、CrowClawさんがブックマーク「痛いニュース:アグネス・チャン、聖火リレー妨害について「政治的なことは持ち込んでほしくない」」に対し、

アグネスもちゃねらーも解ってないな。スポーツと政治は対立概念じゃないし、五輪はスポーツそのものの政治化でありナショナリズムへの隷属化。五輪を開催すること自体が完全に政治的な行為なんだよ。

 とツッコんでいるのを見て、驚きのあまりパニクってポストします2

 この件についてあまり言いたくない(単なる無関心以外の)理由として、まずわたしはチベットのことをよく知りません。
 中学生の時にチベットのことを突然猛烈に調べだし、子供の割には結構勉強した気がするのですが、わたしのチベット知識はこの時をMAXに下がり続けていて、今では「名前が『ン』から始まる人が多い」くらいのことしか覚えていませんまちがえました、それはネパールでした。つまりわたしのチベット知識はその程度です。ちなみに、その時わたしの百倍くらいの情熱でチベットとチベット仏教の勉強をしていた友人(男)が、高校生になってから一転してカトリックの洗礼を受け、神父になる道を進んでいたのですが、その後どうなったのか気になります。
 『チベット死者の書』の翻訳も読みましたが、ほとんど忘れた上、今回の件には全然役に立ちません。というか、今まで役に立ったことが一度もありません。一神教徒なので、死んでも役に立たない予定です。
 それから、もう少し本質に近いことですが、この問題はとにかく胡散臭い。
 チベットの味方のような態度を取っている勢力には、本気で「人権」を振りかざしている人たちと、「人権」を隠れ蓑に中国を叩いているケースがあります。ある意味、左右共闘です。
 更に、中国に因縁付けたい日本人には、緩く親米で中国が嫌いな人と、アメリカも中国も皆んな嫌いな人がいる。中国が嫌いだけれど、中国が嫌いだからチベットの肩を持つんじゃなくて、人権的にがんばってるのよ、わかってよ、という人もいる。これが海の向こうになると、欧米人のナイーヴなオリエンタリズムも加わって更にややこしいです。

 そういう外野の胡散臭さ以上に、そもそもの内野が両方とも胡散臭い。
 この「内野の胡散臭さ」については、「梁文道:チベット問題の最大公約数を探る」が大変わかりやすいです。

チベット問題はまったく霧に包まれていて、一歩近づくと、もともと信じていたいかなる簡単な立場も十分な根拠のある反論に直面するのだ。現在の西側メディアのニセ報道や中国メディアの情報コントロールがどちらも疑いをもたれるだけでなく、歴史上の謎はさらに人の目をくらませる。もしあなたが「昔から」、チベットが中国の一部だと考えているとすれば、あなたは非常に多くの時間をかけて古代宗主国の属国との関係が現代の民族国家とその管轄下の省の関係と同等であることを説明しなければならない(むしろベトナムはかつて中華王朝の一省だった)。翻って、もしあなたが「中国の侵略」まえに、チベットは少しの暴力もない平和な浄土であったと信じているとすれば、14人のダライラマのなかでわずか3人だけが成年まで生きられた事実をどう理解するのか? もしあなたが文革のチベットに対する破壊は許すことができないと思うのであれば、当時寺と仏像を破壊した主力の一端はチベット人であったことを知るべきである。もしあなたが中共がチベットに対して許している宗教の自由がすでに十分寛容であると考えているのであれば、そして外国に亡命した多くの高僧が故郷に戻って寺を建てている(もっとも有名なのはディルゴキェンツェ(頂果欽哲)法王だろう)ことを知っているあなたは、現在のチベットの小学生は護符さえ身につけることを禁止されていることも知っているだろう。

 個人的に蛇足を加えるなら、世の文化人に割と人気のあるらしいダライラマという人が、実に胡散臭いです。
 大体、言っていることにソツが無さ過ぎます。ソツの無さ過ぎることを言う人が目立っているときは、必ず目立たないところでソツのありまくる人たちが虫のように蠢いているものです。この場合で言えば、チベット青年会議やそれを支持している政治勢力などの具体的な動きがソコココであるはずなのですが、(主にわたし個人のこの問題への無関心により)その動きが今一つクリアにならない。胡散臭いです。

 こうした状況で、大衆がネタにしているのが、オリンピック聖火リレーの妨害と防衛です。
 胡散臭いこと極まりない問題の象徴的イベントが、胡散臭いイベントの象徴のような「オリンピック」。話がまとまり過ぎます。
 オリンピックとはもちろん、土建屋が大人の政治力を競い合う大変健全で酒臭いスポーツイベントです。わたしもいつも応援しています。日本の土建屋を。
 東京オリンピックを見るまでもなく、オリンピックというのは、開発途上のイケイケの国が飛躍のマイルストーンとしたいイベントです。
 結構育ってきて「もう一歩」という状態は、何でも胡散臭いものです。犬の成長を見ていると、全体が徐々に大きくなるのではなく、子犬のまま耳だけ妙に成犬っぽい、という時期があります。すごくアンバランスで怪しいです。人間でも中学生くらいが一番ツギハギで恥ずかしいでしょう。オリンピックを開催して飛躍したい国というのは、そういう怪しい季節なのです。
 中国の嫌いな人は、イカガワシイ国でイカガワシイお祭りをやるのだから、むしろ聖火リレーを守る側に立ったら面白いんじゃないでしょうかね。
 ちなみに、好きか嫌いかと聞かれるとわたしも中国のイメージはあまり良くありませんが、その主な理由は昔バイト先にいたある中国人が、屁理屈ばっかり捏ねて全然使えなかった、という私怨によるものなので、政治的正当性は一ミリもありません。

 胡散臭いものは個人的には大好きなのですが、三方胡散臭さに囲まれて、もうどっちへ行って良いやらもわかりません。
 聖火リレーを単に妨害するのではなく、かっぱらって走って逃げた挙句、新大久保あたりで「真のオリンピック」を勝手に開く、とかいう方向が基本的には面白いのですが、中国・チベット・オリンピックの圧倒的な胡散臭さの前では霞んでしまいます。
 むしろ聖火リレーとその妨害を、今オリンピックの正式種目として採用して頂きたいです。スルメ食べながらそれをテレビで見ているくらいが、程よい距離なのではないかと思います3

  1. ish用語で「人間どものことはどうでもいいが、神様に祝福されっぽい」の意。神様ウケするとポワンポワーンとなってコメカミのLEDが光るのですぐわかる []
  2. 念のためですが、こんなその辺のマセた中学生にも自明なことを今更他人にツッコまれている人間が地上に存在した、という驚きです< 追記:CrowClawさんが「マセた中学生」という意味ではありませんw []
  3. 「ふざけるな、こうしている間にもチベットでは人が殺されているのだ」と言う超直球な人がいるかもしれませんが、人なんかパレスチナでもコンゴでも新大久保でも殺されています。一人がいっぺんに参加できる戦争は限られていますし、どの戦争で弾を撃つかくらい勝手に決めさせて貰います。趣味の戦争ですから []