ドバイにある世界地図の形のリゾート「ザ・ワールド」、前田高行『アラブの大富豪』


410610251X アラブの大富豪 (新潮新書 251)前田 高行 新潮社 2008-02

 日本でアラブやアラビア語に興味を持つのは、一つは文化的なチャンネル、イスラームやアラブの音楽、ダンス等といったものがあるでしょう(両者は一面で相容れないのですが)。
 もう一つ、石油というものがあります。
 わたしは専らイスラームからアラブに関心を持つようになり(もちろん、アラブ即イスラームでもイスラーム即アラブでもありません)、今も脳の80%くらいは神様に使っている狂人なのですが、アラビア語を学びはじめてから、学習者の一大勢力として、石油会社関係者など、ビジネスを主目的としている人たちがいる、ということに気付きました。
 サウジアラビアが世界最大の産油国であり、わが国のエネルギーが中東に大きく依存していることは、普通の日本人なら一応知ってはいるでしょう。
 しかし、「アラブ」という言葉からすぐに連想するのは、どちらかというと文化的側面、もしくはパススチナ問題や「イスラーム過激派」等ではないでしょうか。この「アラブ」のイメージは、(単によく知らないせいで)どことなく神秘がかっているか、あるいは「貧しい」「虐げられた」「闘っている」人たち、というものでしょう。
 でもアラブ、お金持ちです。
 正確には、アラブ諸国の一部、いわゆる湾岸諸国の方々は尋常ではなく大金持ちです。サウジアラビアの歴史を学ぶに連れ、石油の重さと、これに振り回されたちょっとコミカルなまでのドタバタを知るようになりましたが、前田高行さんの『アラブの大富豪』は、もう笑うしかないようなスーパーリッチたちを紹介した本。
 正直、個人的な関心の中心ではないですし、サウジアラビアの歴史概略などは聞き飽きた話でもあったのですが、むしろこういう話題の方が一般の方には面白く読めるのではないかと思います。小難しいことより、とにかくスケールが滅茶苦茶で笑えます。

 本書の中で、アラブ首長国連邦の一つドバイにある「世界地図の形のリゾート」というのが登場します。「ザ・ワールド」というのがそれなのですが、Google Mapsではここになります。
 撮影時期のせいなのか、角度のせいなのか、今ひとつ世界地図っぽくないです。
 こちらの画像だと、モロ「世界地図」です。
ザ・ワールド

 日本はこのへん島国がさらに島になっているのにウケます。
 「ザ・ワールド」のすぐそばには、本書中にも写真があるヤシの木リゾートという、これまたおバカな人口島があります。Google Mapsだと、航行中の豪華客船?らしきものも映っていました。
 ちなみに、同じ「湾岸諸国」サウジのカアバ神殿はこちら。ムスリム以外は近付くこともできない場所ですが、衛星写真なら拝めます。
 サウジもドバイ同様に大金持ちのレンティア国家でありながら、同時に「二大聖都」を擁するイスラームの総本山でもある。そして国家成立の経緯自体に、宗教者と部族政治の首長との連携、という二重性が織り込まれている。この辺は本当に面白いです。

 一つ印象的だったのは、日本企業とアラブ企業の商談風景。サウジの民間企業のほとんどは、オーナー一族が経営権を握る同族企業で、例え株式会社でも株式は一族が握っており、市場公開しているところは皆無に等しいそうです。そんな調子なので、ビジネスの進め方もとにかく現場に乗り込んでいって話をつける、という形になってしまうのですが、そこは部族社会のオーナー社長。日本企業の部長・課長クラスが「持ち帰ってトップに相談します」などと返事すると、途端に機嫌を悪くするそうです。
 逆に中小企業の社長が単身乗り込んでいった場合には話が早く、ある大阪の中小企業オーナーが乗り込んでいった時は結局折り合わず「あんさん、そら無理ですわ。この話はなかったことにしまひょ」となったのですが、大変気持ちの良い別れ方になった、とのこと。
 日本人の中では、大阪人の方がノリが合いそうです。