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イスラーム, 思想

4582481345 イスラームに何がおきているか―現代世界とイスラーム復興
小杉 泰
平凡社 2001-12

 初版は1996年と十年以上前ですが、9・11を受けて2001年に増補・改訂されたイスラーム復興を巡る概論集。
 お目当ては最近お気に入りなのに単著は読破してしまった保坂修司さん1だったのですが、小杉泰、鈴木董、大塚和夫、私市正年、飯塚正人、吉村慎太郎、保坂修司、酒井啓子、小松久男、佐藤考一、中村緋紗子、川島緑、内藤正典、中田考、臼杵陽と、日本のイスラーム研究の主な面々が勢ぞろいしているところもあり、なかなかお買い得です。
 増補版で追加された『「アメリカ同時多発テロ事件」への視座』二編については、確か池内恵さんが批判されていて、実際「慌てて何か言った」感じも否めません。そうした「思想」寄りのテクストより、地域研究の方が魅力的でした。
 エジプトやサウジアラビア、あるいはインドネシアといった、イスラームと言えば必ず取り上げられる地域だけでなく、中央アジアやアルジェリア・モロッコ、さらにフィリピン辺境の「少数派」イスラームについても触れられています。
 個人的に、一番興味を惹かれたのは、過激なイスラーム救国戦線(FIS)が台頭し無政府状態に近いアルジェリアと、経済状態では似た苦境にありながら比較的政情の安定している隣国モロッコを比較研究した私市正年さんの『反体制と体制のはざまで』。イスラームの「普遍的二元性」という、宗教秩序において非常に重要なポイントから分析されています2

 巻末の資料篇(現代イスラーム復興の諸組織一覧、イスラーム復興略史、読書案内)はなかなかボリュームがあり、特に厳選二十九冊が紹介された読書案内は、アカデミズムと関係ないところで勝手に濫読している人間には有り難いです。

 ちなみに、こういう複著者による「概論集」的書籍を新書で出せば、結構売れるのではないかと思うのですが、あまり見かけませんね。
 本書まるごとではボリューム的に大きすぎるので、例えば地域研究系だけ集めて新書にすれば、「ざっとまとめ」な新書ニーズに合いますし、一篇一篇が短いので通勤電車で読むにも便利だと思うのですが。

  1.  以下参照。
    「『サウジアラビア―変わりゆく石油王国』保坂修司」
    「『正体―オサマ・ビンラディンの半生と聖戦』保坂修司」
    「『乞食とイスラーム』 ストリートと貴種流離談」 []
  2. この構造は世俗化したキリスト教とか自民党でも一緒な気もしますが(笑) []
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