カフルーシャはリアル”Be kind rewind”だ!


 アラブ映画祭2008で『満開(満月)』『VHSカフルーシャ~アラブのターザンを探して』『サービス圏外』を見てきました。
 最大のお目当ては最初のエントリで書いた『VHSカフルーシャ~アラブのターザンを探して』だったのですが、予想通り、というか予想を遥かに上回る凄い作品でした。
 チュニジアの自主制作映画野郎カフルーシャを追ったドキュメンタリなのですが、「こんなオッサンが本当にいていいの!?」という迫力。これ、ほんとにドキュメンタリなんですよね?
 「映画監督」カフルーシャは、普段はペンキ屋さんの45歳1。アメリカ映画をこよなく愛し、映画好きがとまらず自作自演のビデオ映画撮りまくっている熱い男です。
 その熱さが、とにかく尋常ではないのです。『VHSカフルーシャ~アラブのターザンを探して』劇中で、クリント・イーストウッドへの愛を語るシーンがこれ。


 字幕ナシでも、ノリがわかって頂けるでしょうか。
 役者の出演料も飲み代だけ。剥製の鹿と格闘したり、ゲリラ撮影で怒られたり、わたしも自主制作映画を撮っていた人間なので、雰囲気はわかります。
 違うのは、協力者や街の人たちがカフルーシャに負けず劣らず熱いこと。旦那と「家庭内離婚」状態で、生きがいを求めてカフルーシャの映画に出演するオバチャン。ビーチで無断撮影中に売春婦呼ばわりされた時は、「息子が聞いたらお前なんか生き埋めだよ!」と反撃。
 他の出演者もカフルーシャの気迫に負けて力を貸しているのですが、そのどれもがハリウッド的ステレオタイプを地で生きているようなキャラ。ある意味「本物」です。マフィアたちの乗る改造バイク?も、どう考えても映画用のものではないですから、要するに普段からそういうバイクに乗っている街のチンピラです。
 撃たれたシーンで血糊を使うところを、自分の腕を切ってリアル血液で代用。というか、そっちが本物です。アンタほんとに怪我してるやん!(別のシーンではリアル鶏の血をそのままベッタリ使っていました)
 カフルーシャのお母さんも熱い! 女手一つで子供たちを育てた彼女は、自ら「男よりも意志が強い」と語る肝っ玉母ちゃん。カフルーシャの作品への協力も惜しみません。カフルーシャの兄がイタリアで逮捕された時は、電車を乗り継いでイタリアに不法入国、法廷で泣き続けて六年の刑に減刑させた、とのこと(ちなみにカフルーシャの息子も「ナイフと催涙ガスを持ち歩いてただけ」のカドで拘留中)。
 「この街だから映画が撮れる」という街の人々は、恐るべき失業率で、みんな働く気全然ナシ。「ここじゃ、夏は金と同じ意味なんだよ」と若者が語る通り、観光客目当てのシノギで生き延びているようです。
 そうやって作られたチープ極まりないカフルーシャの作品を、街のみんなは本当に楽しみにしているのです。上映会はカフェ貸切です。
 ホロリとさせられるのは、映画の最初と最後に登場するイタリアで働くチュニジア人の風景。友達の家にテレビやビデオを持ち寄って、故郷のカフルーシャの作品を見て、辛い日常の中でつかぬまの喜びを分かち合っているのです。

 手作りでハリウッド映画をリメイクする“Be kind rewind”町山智浩さんのブログで紹介されているのを見てから楽しみで仕方がないのですが、カフルーシャは「リアル”Be kind rewind”」です。
 できれば『VHSカフルーシャ』ではなく、カフルーシャの作品そのものが見たいです。オリジナル・カフルーシャは意外と面白くない可能性も大いにありますが、それでも結構です。実はフィクション・ドキュメンタリーだとしたら存在しないことになってしまいますが、もし実在するなら、なんとかして日本に紹介して頂きたいです。残念ながらわたしの語学力では字幕を付けることもできませんが、お手伝いできることがあれば本気で何とかしたいです。

 VHS-Kahloucha公式サイトはこちら
 web上には、日本語はもちろん、英語字幕も見当たらなかったのですが、フランス語字幕の付いたものがいくつかありました。
 VHS Kahloucha la 2eme BANDANOUSS
 كحلوشة لكازمات
 كحلوشةで検索するとアラビア語情報も結構見つかります。

 劇中歌も最高!

 極私的最大ヒットの剥製の鹿?と戦うシーンがあります。

 ちなみに、一緒に見た『サービス圏外』には、確かに日本人「新谷(シャンタニ)」が出演していました。
 シャンタニを演じているのは本物の日本人らしいのですが、一体どうして「シャンタニ」なのかは謎。彼のアラビア語だけはいくらか聞き取れました(笑)。
 物語は個人的好みではなかったのですが、ダマスカスの風景がとても美しかったです。

  1.  ちなみに、わたしはひと夏ペンキ屋さんでアルバイトをしたことがありますが、ペンキを塗っているとシンナーのせいか結構ハイになってきます。わたしをそのアルバイトに入れてくれた先輩は本職顔負け、というかほとんど本職としてペンキを塗っていたのですが、どことなくカフルーシャに勢いが似ています。
     さらに余談ですが、ペンキ屋さんというのは結構セキュリティの要求される仕事です。ヤンキーが夜中にシンナーを盗みに来るので。 []