『オナニーマスター黒沢』と眼差し、ホルバイン『大使たち』

 『オナニーマスター黒沢』(原作 伊瀬カツラ 漫画 YOKO)というweb漫画を読みました。
 タイトルから容易に想像できる通り、少年マンガ独特の「キツさ」もあるのですが 、とてもよく構成された作品でした。
 放課後の女子トイレでこっそり自慰にふけることを生きがいにする中学生、黒沢。ある日この秘密をいじめられっ子女子の北原にバレてしまい、それから北原に横暴な「取引」を持ちかけられるようになる。それは北原に代わり、ある手段を使っていじめっ子たちに「復讐」することだった・・というお話。
 やっていることは明らかな変態的・犯罪的行為なのですが、少なくとも漫画で描かれる黒沢は「いじめられ」的な存在ではなく、常にメタ的な視点から物事を見ている、良く言えば人と群れない、悪く言えば気取った協調性のないタイプ。クールな黒沢がそんな秘密を握っているなど、誰一人想像していません。
 北原と黒沢の会話は、トイレのドア越しを基本にしています。いくつかの根拠から、北原は「そこ」に隠れているのが黒沢だということを、見抜いてしまうのです。「黒沢くんなんでしょ?」「返事をしないということは、黒沢くんなのね」「いいわ、そのまま聞いて」。
 これは典型的な「世界を覗き見る主体」の構造です。黒沢は別段覗きをしているわけではありませんが、狭い個室に籠って、相手からは見えない位置から世界を「見て」いる。「わたし」は不可視化し、世界は風景としてある。彼の内言の多い性格にも、これが表れています。黒沢への同一化が促されるのは、主体とは「黒沢的」なものだからです。
 しかしやがて、この関係が逆転する時が来ます。
 以下、「ネタバレ」も含まれるため、本編をご覧になってか、覚悟の上でお読み下さい。
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ヘカタイオスと桜木建二

 「岩明均『ヘウレーカ』 科学のディスクールと< 真理>の鏡」で、『ヒストリエ』の4巻が発売されているので何か書くかも、と追記しておきながら、放置していました。非常に好きな作品であり、未完でもあることから、なかなかまとまったことが書けません。
 代わりに、ものすごいしょうもないところにツッコんでみます。
 ヒエロニュモス家の執事的存在ヘカタイオスと『ドラゴン桜』の桜木建二って、ちょっと似てません?

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