アヒルの首を捻って殺す

 証すために、殺さなければならなかった。
 彼と二人で暮らす部屋は、どんよりと薄暗く狭苦しい。その狭い部屋に、わたしたちの他に動物たちがいる。敷きっぱなしの布団の向こうに、動物たちが暮らしている。
 その動物の一匹を、殺さなければならなかった。
 羊は大きすぎるし、わたしには殺せるか分からない。そこでアヒルを呼んでみた。
 アヒルも怒ると手の付けられない生き物なので、少し不安だったが、いつになく大人しくわたしのそばまで来てくれた。悟られないように優しく首に手をかける。彼はとなりの布団の上に座り、あまり関心なさそうに見ている。
 細い首にかけた手に、少し力を入れる。アヒルは大人しくわたしに寄り添ったままだ。これ以上力を入れたら暴れられて、クチバシで突かれるだろう。そこでもう片方の手も添えて、一気に捻った。
 雑巾を絞るように両手でアヒルの首を捻った。一瞬でも力を抜いたら、断末魔の苦しみの中でわたしも傷つけられ、凄惨な場面になると思った。捻った形で腕が固まるほど、全身の力を込めて首を捻った。
 アヒルは首が不自然な角度で曲がったまま、絶命した。最後まで一度も鳴かなかった。予想と違い、あっけないほど大人しく死んだ。
 恐怖でうちふるえていたのはわたしだった。
 可愛らしかった白いアヒルを、首を捻って殺してしまったのだ。
 アヒルが息絶えると、彼はまた無関心そうに布団の上で向こうを向いた。性行為の後に背を向けて煙草を吹かすようだった。

 証すために、殺さなければならなかった。
 しかし何を証すために。
 彼のためだろうか。あるいは、わたしが女であるために。
 だが、わたしの強さを証すためだったかもしれない。それができる、ということを示すためだけだったのかもしれない。