ミヒャエル・エンデ『自由の牢獄 ― 千十一夜の物語』は、同名短編集に収められたアッバース朝時代のバグダードを舞台とする一篇。自由と全体性について考える上で、素晴らしいヒントになる傑作です。
自らの意志と能力だけを頼り、神を信じず放蕩を尽くしていた大商人が、ある夜イブリース(悪魔)の罠により百十一の扉を持つ白い空間に閉じ込められます。
扉の向うに何があるかはわかりません。自由への扉かもしれないし、猛獣が待ち構えているかもしれません。ただ、一つの扉を開くと、他の扉は永遠に閉ざされてしまいます。つまり、選べるのは一つだけです。
そこは神の意志の及ばない例外的な「自由な場所」で、どの扉を開けるかは本人次第、神の慈悲を請うこともできません。
部屋には姿なきものの声が響き、男と問答を繰り返します。この声は、人が心の中で呟く内言のような様相を示しています。
「扉がみな同じならば、どの扉から出ても同じだろう?」
「開ける前はみな同じだが、その後ではちがう」
(・・・)
「つまり、選ぶ理由は何もないということか?」
「理由はまったくない。おまえがおのれの自由意志で決めたというほかは」
(・・・)
「どうして決めることができるのか? 扉がどこに通じているのかわからないのに」
「それを知っていたことが一度でもあるのか? 生まれてからこれまでというもの、おまえはあれやこれやと決めたときに、理由があると信じていた。しかし、真実のところ、おまえが期待することが本当に起こるかどうかは、一度たりとも予見できなかったのだ。お前の理由というのは夢か妄想にすぎなかった」
決めかねるまま時だけが流れ、男は憔悴していきます。彼は次第に、部屋の中に「印」を探すようになります。
Read the rest of this entry
Filed under: 思想 | | Trackbacks (1) 2008/03/30
先日アイラッシュトニックを買ったばかりなのですが、件のエントリで予言していた通り、他のまつ毛美容液にも手を出してしまいました。ミューラッシュ・パフェです。わたしの予言はいつも当たります。

Read the rest of this entry
Filed under: コスメ・スキンケア | | Trackbacks (0) 2008/03/27
『乞食とイスラーム』『正体―オサマ・ビンラディンの半生と聖戦』に続き、保坂修司さんの著書。
サウジアラビアという国の社会構造、その問題点と変化がわかりやすくまとめられています。
サウジアラビアの成り立ち、ワッハーブ運動については以前ご紹介した『サウジアラビア現代史』もオススメですが、本書の主眼は通時的視点というより、共時的・構造的な分析。
Read the rest of this entry
Filed under: イスラーム, 思想 | | Trackbacks (1) 2008/03/20
続けざまにすいませんが、先日触れた気まま絵日記さんのエントリで「マスカラやアイライナーが滲んでしまう」というよくある悩み、パンダ目問題が書いてあったので、わたしが実践しているコツをメモしておきます。
かく言うわたしも手先が不器用で、しょっちゅうマスカラやアイラインで失敗しています。
不器用なのは諦めるとして(諦めるのかっ)、パンダになった夕方は本当に惨めな気持ちになるので、何か方法がないものか、以前にグルグル検索したりして調べてみました。
そうしてリサーチした候補の中で、実際に効果があったのが、
Read the rest of this entry
Filed under: コスメ・スキンケア | | Trackbacks (1) 2008/03/17
「なぜ今ウサーマ本?」かと言えば、先日紹介した『乞食とイスラーム』の保坂修司さんの著書だからです。
普通に読んでも『乞食とイスラーム』は面白いですが、保坂修司さんの文章からは、通り一遍のインテリではない頭の良さが感じられます。乞食という着眼点だけでもグッと来ますが、相当辛辣なことを書かれていても嫌味にならないのは、優れたユーモアの持ち主だからでしょう
見た目と直観ですべてを判断する狩猟民なので、気になる著者がいるときは画像検索で写真を探してから判断するのですが、どことなくお茶目な印象。トークも面白いに違いありません。
ちなみに、本書あとがきで触れられている、9・11以前から「オサママニア」として運営していたという保坂さんのサイトは、多分こちらです。「保坂修司」等で検索してもまずひっかかりません。「日本の中東」の最高なセンス、渋すぎる「サウード家メンバー検索」、「趣味はご朱印集め」、間違いなく保坂修司さんはわたしのタイプです。わたしのタイプの人は、大抵地球社会で冷遇されているので、こんなに面白いとちょっと心配になります。
『正体―オサマ・ビンラディンの半生と聖戦』のこんな一節にも、わたし好みの知性を感じます。
周縁に位置するものが、中心を志向すれば、しばしば過剰なまでの「中心性」を身にまとわなければならない。本物以上に本物らしくないと本物とは認められないということである。
これはウサーマの「周縁性」に触れた箇所ですが、彼は大富豪ではあるものの、父の代にイエメンの寒村から出てきて一代で財を成したもので、サウジを支配する王族の血を分けたものでも、マッカ・マディーナを擁するヒジャーズ地方の「都会人」でもありません。さらに母親は外国人とも奴隷とも噂され、一族の中でも浮いた存在だったようです。
アラブ人男性としては「シャイ」な子だったというウサーマ。実際、彼がビデオ映像で語る様は、アラブ人によるプロパガンダの多くが手振り身振りを交えた激しいものなのに対し、物静かで淡々としています。純朴そうな青年が世紀の怪物へと変貌していく様子、そしてムジャーヒディーンを巡る「大人の事情」な物語を読み進めるに連れ、無性に悲しく、やり切れない気持ちになってきました。
Read the rest of this entry
Filed under: イスラーム, 思想 | | Trackbacks (0)
恒例のトゥヴェールお買い物です。今回購入したのはどれだけリピートしているかわからないディープホワイトパウダー(旧AP POWDER)とアクアナノライズジェル、そして今回初注文ののホワイトクリームⅡ。
ホワイトクリームⅡは発売されたばかりのころにサンプルを使ったのですが、購入を決め手になったのはアルジルリン。アルジルリンとは、「塗るボトックス」とも呼ばれるリンクルケア系の成分です。
「塗るボトックス」と言っても、アルジルリンがボトックスと同じわけではありません。ボトックスは調整されたボツリヌス菌を注射して表情筋の働きを阻害するものですから、同じものが簡単に肌に塗れたら大変です。ただ、同様に表情筋の緊張を和らげることで、緩やかに表情シワを予防・治療する働きがあるようです。
ハッキリとしたシワで困っているわけではないのですが、何事も予防が一番。アルジルリンの含まれているスキンケア製品は色々あるのですが、長年愛用しているトゥヴェールのものなら安心です。トゥヴェールと言えばAP POWDERなどのリーズナブルで自然派の化粧品材料が有名で、わたしはビタミンC誘導体一本槍だったころからトゥヴェールを愛用しているのですが、今まで買ったどの製品もハズレがなく、肌にも優しいです。以前は美白ケア系が強かったのですが、最近はアンチエイジング系から健康食品にまでラインナップを広げています。

Read the rest of this entry
Filed under: コスメ・スキンケア | | Trackbacks (0) 2008/03/13
突然、まつ毛が短いような気がしてきて、憑かれたようにまつ毛美容液を探し出しました。
こういうの、何なのでしょうね。
「まつ毛がもっと長かったら、濃かったら」と考えたことはあるにせよ、昨日までだってその短いまつ毛で生きてきたわけで、少なくとも猛烈にパニックに陥ったりはしていなかったのです。それがある日突然、まつ毛を何とかしないとレゾン・デートルが失われるような強迫観念に駆られ、まつ毛美容液比較に集中している時に話しかけられたりしたら0.2秒でバックハンドブローが飛びそうな勢いです。
多分きっかけは、いつもの美容院のお手洗いでまつ毛美容液の広告を見たことだったのではないかと思います。
その美容液自体は購入しなかったのですが、突然「効くかどうかはともかく、努力することはできるんだ」と、一つのオプションが発生してしまったのです。
今までは「まつ毛を長く・太く見せる」アレコレだけがあり、その前提としての「まつ毛そのもの」は問われていなかった、言わば地に埋もれていたわけです。当然ながら、まつ毛美容液の存在を知らなかったわけではないですし、今までだってまつ毛育毛の情報は届いていたはずです。でも、とりたてて気にもしていなかった。知らない外国語が分節できないように、「それ」を「それ」として認識できていなかったわけです。
「見えていない」ものの情報は、おいそれと脳みそに届きません。
わたしは自動車にまったく興味がなく、一番粒度を細かくしてベンツとカローラの区別くらいが限界なのですが、わかる人にとっては、それはもうめくるめく世界が広がっているのでしょう。逆に、マッチョな殿方にスキンケアを三時間語っても、美容液と除光液の識別すら身に付かないかもしれません。
そういう「認識のバリア」が、ふとしたことでサクッと突き抜けられることがあります。
突破してくるのは、大抵なんでもないものです。今までにも百回二百回見聞きしてきたような、ありきたりの情報です。
壁に向かって一万回体当たりしていたら、一万一回目で突然テレポートして向うに抜けられてしまって、しかもどうやって抜けたのか自分でもわからないで呆然としている感じです。
とにかく、まつ毛美容液が突破してきました。
可能性の誕生です。
その可能性が「現実」になるかどうかはともかく、とにかく「何かする余地」を思考することができるようになる、ということです。空間に線が一本引かれ、象徴言語の経済に組み込まれるということ、糸巻き車のフォルト・ダーです。
そういうわけで、実際に伸びるかは別として、「マスカラやビューラーで一時的に良く見せるのではなく、まつ毛そのものを育成する」という可能性がひらめいた途端、ものすごいやる気になってしまいました。
こういう「根本を治す」系に弱いです。「噛み合わせ」とか「骨盤矯正」とかにヤラれるタイプです。根本主義者ですから。ファンダメンタリストですから。
とはいえ、まつ毛育毛はまだまだ初心者。アットコスメのクチコミをチェックしたり、超基本からスタートです。
ランキングではDHCのアイラッシュトニックやアヴァンセ ラッシュセラム EXが上位なのですが、パフェ まつ毛美容液も評判が良いです。わたしのことなので、結局全部買ってしまいそうな気もするのですが、とりあえず安くて基本そうなDHCのアイラッシュトニックから購入しました。

Read the rest of this entry
Filed under: コスメ・スキンケア | | Trackbacks (1) 2008/03/10

最近、お手頃価格のパック「クリアターン」シリーズを愛用しているのですが、今回購入したのは白金ナノコロイド。
白金ナノコロイドはアンチエイジング系の素材で、「身体のサビを取り除く」そうですが、その辺りは眉唾でも結構。パックなんて、何となく「ありがたい感じ」がするだけで十分です。仮に白金ナノコロイドに何の意味もなかったとしても、大抵の保湿系スキンケアに含まれるグリセリンには、確実に効果があります。単に化粧水&ペチペチするだけでなく、一定時間パックを乗せておくことが重要なのです。イオン導入を使えば、ますます強力です(イオン導入器の方にコットンをつけるのではなく、パックの上からイオン導入器を使う)。
大体、白金ナノコロイドなどの「新発見!」なアイテムより、昔からあって値段も安いグリセリンやビタミンCなどの伝統素材の方が、効果も検証されていて確実なものです。スキンケアに限らず、世の中大抵そんなものです(笑)。
ただ、それだけだと資本主義が回りませんし、消費する方も楽しくありませんから、お気楽に白金ナノコロイドでもブルーレイディスクでも有り難がったら良いのです。
そうした「気持ち的意義」としては、パックにはもう一つ「時間を味方につけること」という要素があります。
この「時間を味方につけること」には、スキンケアを越えた意味があります。
Read the rest of this entry
Filed under: コスメ・スキンケア | | Trackbacks (0) 2008/03/05
乞食という観点からイスラームを考える、ユニークな一冊。
本書が含まれる「ちくまプリマーブックス」はジュニア向けの選書らしく、難しい漢字にはルビが振ってあったりするのですが、内容的にはまったく「お子様向け」ではありません。面白すぎます。
イスラーム的な「乞食」とは、寸借詐欺から押し売り、偽説教師や大道芸人まで含まれる幅広いもので、「アウトローでストリートな人々」だと考えた方が適切です。「乞食を切り口にしたイスラーム論」というより、「イスラームを切り口にしたストリート論」として読むと、さらに楽しめます。ジョークも交えた躍動感溢れる文体も魅力。
ちなみに、本書執筆中クウェート大使館勤務であった筆者は、湾岸危機の煽りを食ってバクダードに「ゲスト」として連行されたそうです。解放され自室に戻ってみると、家財と共に集めた資料は完全に散逸。その後サウジアラビア勤務を経て完成させた、とのこと。
豊かな湾岸諸国にも乞食が多いこと、組織的「乞食ビジネス」の秘密、女性の乞食が多いわけ、ストリートで働く子供たち、など、現代的話題も面白いのですが、ここでは、特に興味を惹かれたイスラーム的「乞食」における祖先伝説と「貴種流離談」についてメモしておきます。
Read the rest of this entry
Filed under: イスラーム, 思想 | | Trackbacks (0) 2008/03/04